2018年のプロ野球日本選手権シリーズ(日本シリーズ)は、4勝1敗1分で福岡ソフトバンクホークス(以下、ホークス)が南海ホークス時代からの通算で「9度目」となる日本一を飾って幕を閉じた。
特に、どこかのプロ野球チームを応援しているわけではないのだが、北海道地域のテレビやラジオではどうしても「北海道日本ハムファイターズ(以下、ファイターズ)」の試合や応援に熱が入る理由から、必然的にパ・リーグの情報はキャッチしやすい状況にある。
それらの情報だけを見てみれば、春先から8月に入る前あたりまで、今年のホークスにはそれほどの強さを感じていなかった。
打線が噛み合わないせいなのか、守護神の外国人ピッチャーが早々に離脱したせいなのか・・
昨年はホークスに痛いようにやられていたファイターズも、今年は同一カード2連勝や3連勝と勝利を重ねていて、一時は、首位埼玉西武ライオンズ(以下、ライオンズ)と2位ファイターズの一騎打ちの様相も呈していた。
ところが底力の差が終盤に顕著となり、終わってみれば首位ライオンズと2位ホークスの2強独走状態となってしまった。
一方、セ・リーグはぶっちぎりで優勝した広島東洋カープ(以下、カープ)が、セ・リーグでは巨人以外では初、あのV9以来となる「リーグ3連覇」を果たす。
”おぉー、カープ対ライオンズって懐かしいなぁ”
と思った40代以降のプロ野球ファンは多かっただろう。
そう、この両チームが日本シリーズで最後に対戦したのは1991年まで遡り、カープに至っては、それ以降リーグ3連覇の初年度である2016年まで優勝から遠ざかっていたからだ。
カープは、前田智則が台頭してきた頃、現在の緒方孝一監督がまだレギュラーではなく代打要員だった時代、
そして、ライオンズはいわゆる「AKD砲」がクリーンナップに座っていた常勝ライオンズ時代である。
そして何より、この両チームは日本シリーズで唯一となる「第8戦」を戦った経験を持つ。
※最後の4勝3敗までもつれ、途中に引き分けが1試合あったため
若い世代にはもはやピンと来ない話になってしまっているかもしれないが、あの頃のカープとライオンズは本当に強かったのだ。
それだけに、昔活躍していた色々な選手を思い返してしまうくらいに感慨深いシーズン終了となる・・はずだった。
だから、なおさら余計に引っかかってしまう。
「クライマックスシリーズ(以降、CS)」と言う制度に。
CS導入の2007年以降、毎年何か引っかかりながらもこの制度を見てきたわけである。
ちなみに初年度の2007年は、セ・リーグの2位であった中日ドラゴンズが、今ではおなじみとなった「下剋上」での日本シリーズ優勝を果たしている。
確かに今年のホークスは2位ながら強かったと思う。
終盤のライオンズへの追い上げは、ここ5年で4度の日本一に輝いている常勝球団ならではの強さだった。
そして、その流れがCSにも表れてしまったのではないかと思う。
それでも、やはり日本シリーズはライオンズに出場してほしかったと今更ながら思ってしまうのだ。
アメリカメジャーリーグに目を向けてみると、そのプレーオフ制度は実に分かりやすい。
計30球団が、アメリカンリーグとナショナルリーグに分かれ、各リーグの東・中・西の3地区からプレーオフ進出を目指す。
現在は、リーグ2位以降で勝率1位と勝率2位が1試合だけを対戦する「ワイルドカード争奪戦」から始まる。
そして、3地区それぞれの優勝チームとワイルドカードの1チームによるトーナメントがア・リーグとナ・リーグで始まり、最後は両リーグから勝ち上がってきた優勝チーム同士が世界一を争うシステムだ。
地区優勝をすれば必ずプレーオフに進めるメジャーリーグの制度と違い、
日本の場合、リーグ優勝をしなくてもプレーオフに進めてしまう、というところにやはり問題がある。
まぁ、さんざん議論されてきたことではあるが・・・。
なぜ、リーグ3位のチームが何事もなくプレーオフに進めるのか、
なぜ借金生活の3位チームが貯金生活20以上のチームを短期決戦で倒して、日本一になる可能性があるのか、
なぜ、リーグ優勝したチームに各アドバンテージを与えつつも、もう一度短期決戦が始まるのか
チーム数が少ない日本では、「消化試合を作らない」と言う理由だけではこの制度にはやはり無理があるだろう。
これまでも野球界の重鎮から一般のプロ野球ファンまで、多くの人がこの問題の解消点を挙げてきた。
その中で、やはりしっくりくるのは、「3リーグ制」だと思う。
北海道から九州まで、と移動距離が長くなっているパ・リーグの問題も含め、
4球団ずつの3リーグ制を敷くというものだ。
そうなると、当然各リーグの優勝チームはプレーオフに進出できる。
そして、各リーグで一番勝率の高い2位以降のチーム1チームがワイルドカードとして出場し、計4チームのトーナメントで日本一を決める方法だ。
この中には、もちろんメジャーリーグのような「1試合だけのワイルドカード争奪戦」があっても面白いかもしれない。
これであれば、長いリーグ戦の覇権を争ってきたチームとの”プレーオフ再試合”という意味合いは薄れ、てっぺんを目指した事実上のトーナメントとして観客も応援することができるかもしれない。
優勝できなくても、ワイルドカードを目指すことのできるチームであればその試合は消化試合にはなりにくい。
もちろん、下位同士が戦う試合は消化試合になる可能性も高いが、それは現行の制度でもありえるだろう。
また、昔のプロ野球で採用されていた「前期・後期制」という声もある。
これは、リーグ戦の日程を半分にし、前期と後期でそれぞれ優勝チームを決め、最後に前後期の優勝チーム同士で日本シリーズ出場をかけて争うというものだ。
これであれば、最大で4チームの優勝チームから2チームが日本一をかけて戦うことになり、形としてはすっきりするが、日程編成の問題や、優勝の可能性がなくなった2以下のチーム同士の対戦が結局は消化試合になることから、実現は難しいだろう。
1リーグ制にするには球団数が多いし・・・
となると、やはり各リーグの優勝チームが日本一の覇権を争う形が一番いいのではないか、というところに落ち着いてしまう気がする。
昔の「カープ対ライオンズ」というカードは、それこそ年に1回あるかないか、あれば秋にしか観ることのできない貴重なカードだった。
現在では、5月に早くもセ・リーグとパ・リーグの全カードが組まれてしまい、
”めったに観ることのできない対戦”
という
”レアもの感”
は全くなくなってしまった。
それでも、「カープ対ライオンズ」というカードを期待していた人は多かったはずだ。
誤解のないようにもう一度言っておこう。
今年、ホークスは確かに強く、その強さはまさしく「日本一のチーム」にふさわしいと思った。
それでも・・
リーグ制覇でもなく、ワイルドカードでもなく
パ・リーグ2位という位置から勝ち取った「日本一」という称号に、ピッチャーズマウンドに集まった選手の輪が100%酔いしれることができなかったように見えたのは、気のせいではないかもしれない。