とにかく、都心の朝の通勤ラッシュは異常だ。
電車に入りきらずに溢れている乗客達を駅員が体一杯使って無理やり電車の中に押し込もうとする朝のスクラム、
本当かどうか分からないが、”てめー何触ってんだよ。この人痴漢でーす”と叫ぶ女性と必死で無実を訴える男性、
さらに、その辺でやり合う小競り合いに、
鞄を持った自分の左手が混み合う車内の中で目の前と斜め前の乗客の間に入ってしまって身動きが取れなくなる「どはまり」など・・・etc
出社までの一仕事も、日々発生するトラブルを数え上げれば本当にキリがない。
朝の踏切を通過していく北海道のローカル線が、ゆったりと少ない乗客を運んでいく姿は、
真逆だったそんな都心の朝をいつも思い出させた。
しかし、殺気立つ都心の朝の風景を解消するための切り札もある。
それが、「テレワーク」という働き方だ。
2020年に東京オリンピック・パラリンピックを控える日本では、外国人観光客の更なる増加を見込んで、交通混雑の緩和を目指し、開会式のある7月24日を「テレワーク・デイ」に設定している。
在宅で働くことができれば、朝の通勤が必要なくなるため、働く従業員の負担は減り
企業側は光熱費などの削減効果が見られる。
そしてこの「テレワーク」という働き方は、最近の副業ブームをも後押しする。
企業が従業員の”副業”や”兼業”を認めるようになると、自宅でできる副業などへの足も踏み出しやすくなる。
先の「テレワーク・デイ」では、東京23区に向かう通勤の足の内、のべ41万人もの数が減少したと言う。
諸外国から”日本は勤勉だ”と言われている話も聞くが、実際は朝の通勤ラッシュなど非効率を生む原因であり、
在宅勤務やフレックスタイムなどはもっと浸透してもいいのではないだろうかと思う。
もう一つ”勤勉”・・・と言うかこれも非効率でしかない「長時間労働」という問題もある。
世界にも名だたる大手企業である「武田薬品工業」が、労働基準監督署から「時間外労働限度時間を超えて労働させた」として是正勧告を受けている。
最近では、アイルランドの大手製薬会社「シャイアー」を買収するなどその存在感を国内外にしらしめているが、蓋を開けてみれば経営陣と現場で働く社員たちに格差があり、長時間働かざるを得ないその環境は、よくあるブラックな中小企業と似たり寄ったりなのかもしれない。
と、在宅勤務の推進や長時間労働の無駄などを
書き連ねているが、自分のペースで働くということは、それはそれで難しい側面もある。
時間に追われていない分、自分を律する必要があるし、
窮屈な思いをする通勤ラッシュから開放され、誰にも怒られない環境に身を置くということは
もちろんその分の自己責任も増える。
最近では、オンライン動画の普及もあり簡単に会社と自宅を結んでWebカメラを使った会議なども行うことができるようになったが、
このような監視の目があれば逆に会社にいるのと同じように仕事をする環境を作ることができるかもしれない。
しかし、副業や兼業となるとおそらくそれは個人事業となる働き方がほとんどだ。
「テレワーク」という働き方は、10年以上も前から世の中にはあったが、
大変な思いをしなくても簡単にできるよ、
子供がいる主婦の方は子供の面倒を見ながらできるよ、
という働き方が楽になるようなイメージで唄われてきた。
五輪という一大イベントを前に、首都の混雑緩和の一つの解決策のように再び「テレワーク」が叫ばれ始めている。
しかし、朝の通勤ラッシュと引き換えに手に入れるその働き方・生活は、必ずしも万人に合うわけではないだろう。
それは、決して働き方が楽になるわけではないからだ。
最近、やたらと副業だの老後のお金だのと、求めてもいないのに湧いて出てくるお金や生活の話題にうっとうしさを感じている人も多いと思う。
安易さを含んだあまりの情報の多さに、あなたも辟易している人の一人なら安心して頂いていい。
どこに住んでいても、どんな働き方をしても、そこには常に挑戦と冒険がつきまとうのだから。
【一部参考】週刊ダイヤモンド6/22号