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文章の上手さに優れた国語力や表現力は必要ないのではないか。
最初にこの本を一通り読み終えた後の正直な感想だった。
当サイトも含めた記事の作成やマニュアルの作成など、文章執筆の機会をある程度持っていた自分の文章力を少しでもレベルアップしたい、と手に取った一冊である。
決して国語の成績が良かったわけではない自分が、
”読者を惹き付ける上手な文章を書く人”
が持っているであろう、と思っていた技術とはこうだ。
・難しい言葉や漢字を使いこなす。
・慣用句などの言い回しがよく出てくる
・小説などのストーリーのような展開も含ませた面白さも混ぜられる
・表現が凝っている
例えば、新聞の社説や週刊誌の特集などを読むと、
思わず先まで読ませてしまうその文章力には本当に圧倒される。
そして、この本のタイトルが「文書は読むだけで上手くなる」だったから、
色々な表現力のある文章をどんどん読ませて、その解説に徹するのかと思っていた。
ところがいい意味で裏切られた。
文章というものは、その構成を意識するだけで上手な文章・読ませる文章へと格段とレベルアップできる。
さらに、文章構成を意識しながら他の文章を読むだけで、いざ自分が文章を書く立場になった時でも上手に書けるというわけだ。
学校の授業では絶対に教えてくれない文章を上手に書く技術の肝は、
「リーダーとフォロワーの意識」
である。
「リーダー」とは、文章の小段落を代表する文であり、
「フォロワー」とは、リーダーを補足したり説明したりする文となる。
サイトで記事を書いている人であればよく分かると思う。
おそらく「hタグ」を使ってカテゴリごとに記事を書いたりする場面もあると思うが、このカテゴリがまさにリーダーの役割となる。
カテゴリ分けしない文章を記述しても、各段落の先頭にリーダーの文を置いて、
リーダーの補足としてフォロワーの文を置くだけで、文章の出来はまるで変わってくる。
さらに、以下のコツを意識すれば読むだけで文章レベルは上がると渋谷氏は言う。
・リーダーとしての文が小段落の文頭に来ているか確認する。
・リーダーとしての文が小段落の先頭になければ、小段落の文頭へ移動させてみる。
・リーダーとしての文がなければリーダーの文を考えてみる。
リーダーが意識できると、リーダーだけで文章の骨格が見えてくる。
これを「スケルトン」と言う。
例え、フォロワーがなくてもリーダーをつなげて読むと
文章の大まかな構成が見えてくるのだ。
そのスケルトンには、2つの型がある。
それが「三角型」と「逆三角型」である。
文章を書く際には、突飛な例えや比喩表現から始めたり、印象的なエピソードから始める
「逆三角型」を意識すると文章作成の応用範囲が広い、と渋谷氏は言う。
そして、文章が三角型であれば、それを頭の中でもいいから「逆三角型」に変えてみると、やはり読むだけで文章力が鍛えられるのだ。
実は、この本で衝撃を受けたのはリーダーとフォロワーの解説ではない。
一番の衝撃は、渋谷氏が本書で挙げた禁じ手の4つだ。
一つ目は、「○○主義」である。
この章を読んだ後、自分がこれまで書いてきた文章を読み返してみた。
まぁ、出てくる出てくる、”○○”と”○○”のオンパレードである。
それ以来、この2つは自分の書く文章から姿を消した。
完全ではないが、95%はこの2つの言葉は入っていない(はず…)。
文章の流れで、どうしてもこの2つを使いたくなってしまった時には、文章を読み返すようになった。
一度本書を読み終えた後に、もう一度最初から読み直してみた。
この”○○”と”○○”を意識しながら。
見事に渋谷氏が自身の言葉で説明している文章には、この2つの言葉は一切入っていなかった。
二つ目は、「使い古された慣用句は使わない」である。
この記事の冒頭でもお話したように、「文章を書く技術を持った人は慣用句を多用するもの」と思っていたため、この「慣用句を使いすぎない」という話もある意味衝撃を受けた。
工夫を凝らした言い回しに見える慣用句も
「手垢のついた表現」ほど陳腐に見えてくるのだ。
三つ目の「小説風の文章に潜む失笑もの」も
「小説風に書ける人は文章力のある人だ」
と思っていただけに、その小説風の描写を間違うと読み手に伝わらないのだと痛感させられた。
最後の「○○」は、本書を読む前によく使っていたような気がする。
しかし、リーダーとフォロワーを意識して文章を作っていくと、確かに「○○」はほとんど出てこなくなった。
これまで、何度も本書を読み返してきたが、
自分の文章レベルが格段に上がったとは全く思っていない。
だから、今でも時折最初から読み返している。
何度も読み返すと、この本の文章もまた
リーダーとフォロワーで構成されていて、禁じ手を多用していない。
読みやすいその文章構成に毎回驚かされる。
これから情報発信をする予定のある方、文章を書き連ねる必要に駆られている方には、是非手にとって読んでいただきたい一冊である。
電子書籍版
価格:750円 |